会社を売りたい人が知っておくべきメリット・デメリットとは?3つの売却方法も解説

会社を売りたい人が知っておくべきメリット・デメリットとは?3つの売却方法も解説

経営者の中には、さまざまな理由によって「会社を売りたい(M&A)」と考えている人も少なくありません。

会社を売却することには複数のメリットがある一方、いくつかのデメリットもありますので、両方をよく理解してから慎重に検討することが大切です。

今回は、会社の売却を行う理由や、会社を売るメリット・デメリット、会社を売る主な方法について解説します。

会社の売却を行う理由

 

経営者が自分の会社を売却するのは、高齢で引退を考えるケースが多いのでしょうか?

 
 

会社を売却する理由はケースバイケースで、一概に高齢が理由とは言い切れません。たとえば、後継者がいない、事業を効率化させたい、会社の再生を行いたいなどの理由で会社売却を検討する方もいます。

 
 

なるほど!やむを得ず会社を売却する人がいる一方、経営戦略のひとつとして会社を売る人もいるんですね

 

経営者が会社の売却を実施あるいは検討する理由は複数あります。他の経営者はどんなときに「会社を売りたい」と考えるのか、その主な理由を4つご紹介します。

理由1.後継者の不在

後継者

帝国データバンクの調べによると、2021年時点で会社を引き継ぐ後継者が「いない」または「未定」とした企業はおよそ16万社、全体の61.5%に上っています。[注1]

もともと子や孫がいないといった事情に加え、コロナ禍で経営の見通しが立たず、身内に負の遺産を継承することを躊躇する経営者も多いようです。

実際、事業継承の内訳では、親族に継承する「同族継承」の割合が年々減少している一方、事業譲渡や株式譲渡などによるM&Aの割合は増加傾向にあります。

 

半数以上の企業が後継者問題に悩んでいるんですね。

 

理由2.事業の効率化

中核事業以外のノンコア事業を抱えている企業の中には、不採算事業を切り離し、メインの事業に注力したいと考えている会社もあります。

ノンコア事業を売却すれば、人材や資金を中核事業に集中させ、事業効率化を図ることができます。

 

メイン事業に注力するために会社の売却を行うこともあるんですね。

 

理由3.会社の再生・発展のため

会社を売却すると、買い手から事業の価値に見合った売却金が支払われます。

資金繰りの悪化によって中核事業に支障を来すおそれがある場合、ノンコア事業を売却すれば、不足する費用の補填に役立ちます。

赤字などを抱えていない場合でも、中核事業のさらなる成長や発展を目指し、ノンコア事業を売却して資金調達するケースもあります。

 

成長や発展のための売却があるとは…勉強になります。

 

理由4.アーリーリタイアを実現するため

30〜50代くらいの経営者の場合、会社を売却した資金を元手にアーリーリタイアを計画する方もいます。

将来性のある事業を売却すると、まとまった資金が手に入るため、リタイアしてのんびり暮らしたいという夢を実現することができます。

しばらく休養を取った後、残った資金を使ってまったく新しい事業に参入するケースもあるようです。

 

一言で売却と言ってもいろいろな背景があることが分かりました。

 

会社を売るメリット

会社を売るメリット
 

会社を売ると、どんなメリットを期待できるのでしょうか?

 
 

会社を売却すると、まとまった売却金が手に入ります。それを元手にすれば会社の倒産を回避することも可能ですし、売却した事業の価値が高ければ経営手腕の評価もアップし、融資を受けやすくなるなどのメリットがあります。

 
 

ただお金が手に入るだけでなく、いろいろな面でメリットがあるんですね!よくわかりました

 

会社を売却すると、経済面だけでなく、他の面でもさまざまなメリットが期待できます。ここでは、会社を売却した場合の主なメリットを4つご紹介します。

メリット1.まとまったお金が手に入る

会社を売却すると、売却金としてまとまったお金を手にすることができます。特に業績が上向きだった会社や、将来性があると見込まれる事業を売った場合は、より大きな利益を得られます。

売却金を元手に悠々自適のセカンドライフを送っても良いですし、残った中核事業の開発に投資して成長・発展を目指すこともできます。

メリット2.経営手腕を評価される

好条件で会社の売買が成立した場合、経営者は価値ある事業を成し遂げた人物として、世間から高く評価されます。

経営手腕が評価されると、新たな事業を開始する場合、金融機関などから融資を受けやすくなるというメリットがあります。

メリット3.倒産の危機を回避できる

会社が倒産の危機に直面している場合、事業を売却すれば負債の返済に充てることができます。

株式譲渡なら、会社が抱えている負債ごと譲り渡すことができるため、財務状況の立て直しが可能になります。

メリット4.個人保証を解除できる

金融機関から融資を受ける際、経営者が個人的に連帯保証を負うケースがあります。

これを経営者保証または個人保証といい、万が一会社が倒産した場合は、連帯保証人になっている経営者が保有する財産(土地や建物など)を現金化し、返済に充てる必要があります。

以前は、融資金を全額返済するまでは個人保証が解除されるケースは少なく、会社を売却した後も、経営者個人が引き続き連帯保証人にならざるを得ませんでした。

ところが、平成26年2月に施工された「経営者保証ガイドライン」により、一定の要件を満たした場合、個人保証の見直し(解除)を行えるようになりました。[注2]

経営者保証ガイドラインに法的な拘束力はなく、個人保証を解除するかどうかの最終的な判断は金融機関に委ねられますが、実際に会社売却にともなって個人保証の見直しが行われたケースも多いようです。

会社売却にともなって個人保証が解除されれば、多額の融資金の連帯保証を負わずに済むため、経営者の負担を軽減することができます。

 

会社を売却するって少しマイナスなイメージでしたが、このようなメリットがあるとは驚きました!まとまったお金が手に入るうえに経営手腕を評価されることもあるんですね。

 

会社を売るデメリット

会社を売るデメリット
 

会社を売るといろいろなメリットがあるのはわかりましたが、逆にデメリットやリスクはあるのでしょうか?

 
 

会社を売ると、会社法に基づく競業避止義務により、20年の間、同一または隣接する区域で同じ事業を行えなくなります。また、会社の売却にはさまざまな手続きを行う必要があり、手間と時間がかかる点にも注意が必要です。

 
 

良いことばかりではなく、注意しなければならないこともあるんですね。参考になりました!

 

会社を売ることには複数のメリットがある一方、いくつか注意しなければならない点もあります。

デメリットを知らずに会社を売ると後悔することになりかねませんので、あらかじめリスクもしっかり把握しておくことをおすすめします。

ここでは、会社を売ったときに想定されるデメリットを4つご紹介します。

デメリット1.競業避止義務がある

会社法第21条では、事業を譲渡した会社が、同一の市町村または隣接する市町村の区域内において、譲渡した日から20年間にわたり、同一の事業を行うことを禁じています。[注3]

これを競業避止義務といい、違反した場合は譲り受けた会社から事業の差し止めや損害賠償を請求される可能性がありますので要注意です。

会社を売却した後、売却金を元手に新たな事業を興す場合は、これまでとは全く異なる事業を営むか、あるいは同一・隣接する市町村以外の場所で事業を始める必要があります。

デメリット2.手続きに手間と時間がかかる

事業譲渡で会社を売却する場合、債権者や従業員の承諾を得る必要があります。

債権者や従業員の同意を得られなかった場合、説得に手間と時間がかかるため、場合によっては売却が完了するまでにかなりの期間を要することがあります。

デメリット3.買い手とトラブルになる可能性がある

会社を売却する場合、売り手と買い手は時間をかけて交渉し、事業や株式の譲渡契約を締結します。しかし、いくら入念に契約内容を見直したとしても、リスクをゼロにすることはできません。

特に事業規模が大きい場合や、多数の従業員を抱えている場合は、契約内容も複雑になりやすく、お互いの解釈の違いによってトラブルが生じるおそれがあります。

デメリット4.会社のイメージが低下するおそれがある

会社を売却して中核事業に専念したり、事業のスリム化を図ったりするのはよくある経営戦略のひとつです。

しかし、世間からは「資金繰りが悪化して会社を売った」という印象を持たれることもあり、会社やブランドのイメージ低下を招くおそれがあります。

 

会社を売却することにはそれなりのデメリットがあるんですね。20年間も同一の事業を行えないとは知りませんでした。

 

会社を売る3つの方法

会社の売却
 

会社を売る方法にはどんな種類がありますか?

 
 

会社を売る代表的な方法には、事業譲渡・株式譲渡・会社分割の3つがあります。それぞれ譲渡できる事業の範囲や、手続きの方法などに違いがありますので、自社に合った方法を選ぶ必要があります。

 
 

一言に会社を売るといっても、いろいろな方法があるということですね。自分に適した方法をじっくり検討してみようと思います!

 

会社を売却する方法は、「事業譲渡」「株式譲渡」「会社分割」の3つに区分されます。

それぞれ特徴やメリット、デメリットに違いがありますので、自社のニーズや目的に合った方法を選ぶことが大切です。

ここでは、会社を売る3つの方法それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

事業譲渡

会社の事業や資産などの一部または全部を売却する方法のことです。

たとえば中核事業のみを残してノンコア事業だけを売却したり、逆に従業員を含むすべての事業を譲り渡したりすることもできます。

買い手の承諾を得られれば、不採算事業のみを売却することも可能なため、自社にとって有利な売買を成立できるところが大きな利点です。

ただ、譲渡する取引先や従業員の承諾を得る必要があるぶん、手続きが複雑になりやすいところがネックです。

株式譲渡

株式譲渡

会社が保有する株式を売却し、経営権を譲り渡す方法のことです。

事業譲渡とは異なり、会社を丸ごと買い手に譲り渡すため、簡易的な手続きで事業、雇用、取引先の契約を譲渡することができます。

経営者は株式の売却益を得られる一方、会社が抱える負債は買い手が引き継ぐため、経済面で大きな恩恵を受けられます。

一方で、事業をすべて買い手に継承するということは、経営者の引退を意味します。

一部の事業を引き継いで経営することはできないため、特定の事業を継続したいのなら、事業譲渡を選ぶ必要があります。

また、第三者に会社を譲り渡すと、労働環境ががらりと変わってしまい、既存の従業員がなかなかなじめないといった問題が浮上する可能性もあります。

会社分割

会社分割とは、事業に関して有する権利義務の全部または一部を包括的に譲り渡す方法のことです。

ここでいう「包括的」とは、取引先や雇用契約、各種許認可などをまとめて譲渡できることを意味しています。譲渡する事業の範囲に応じて、ひとつひとつの契約を締結し直さなければならない事業譲渡に比べると、比較的シンプルな手続きで事業を売却することができます。

一方で、会社分割を行うには株主総会の特別決議を開催し、株主の2/3以上から賛成を得る必要があります。反対する株主が多い場合は会社分割を実行できないため、個別の説得・対応に追われる可能性があります。

 

さまざまな売却方法があるということが分かりました!なかでも株式譲渡は既存の従業員のこともしっかり考えると慎重に進めるべきですね。

 

会社を売りたいのなら、メリット・デメリットをよく理解しておこう

会社の事業の一部または全部を売却すると、まとまった資金を得られる、経営手腕が高く評価される、アーリーリタイアを実現できるなど、さまざまなメリットがあります。

その一方で、競業避止義務によって次の事業に制限がかかったり、手続きに時間と手間がかかったりと、いくつか注意しなければならない点もあります。

メリットばかりに注目していると、いざ会社を売却したときに後悔することになりかねませんので、注意点やリスクもしっかり把握した上で、慎重に売却を進めていきましょう。

会社を売る方法にも複数のパターンがありますので、どの方法が自社に合っているか、よく見極めることが大切です。

[注1]帝国データバンク:全国企業『後継者不在率』動向調査(2021年)[pdf]
[注2]中小企業庁:経営者保証のガイドライン
[注3]e-Gov法令検索:会社法